「風営法の許可って必要なんでしょ?」──それだけで終わっていませんか?
ホストクラブやキャバクラの開業を考える多くの方にとって、まず大切なのは「営業をスムーズに始めること」。
そのため、「風営法の許可が必要らしい」と聞いて、手続きを行政書士に任せる方も少なくありません。
ただ、実際に営業するとなると、
**「どこまでOKで、どこからNGなのか?」**という線引きがとても重要になります。
その判断の基準になっているのが、警察庁が全国の警察に向けて出している
「解釈運用基準(かいしゃくうんようきじゅん)」という文書です。
つまり、許可が下りるかどうか、警察から指導を受けるか、最悪の場合は摘発されるかどうか…。
これらは“法律の条文”だけでなく、“実際にどう運用されているか”がカギになります。
とはいえ、この文書は専門用語が多く、ボリュームもかなり多め。
現場の方にとっては、正直かなり読みづらいものです。
そこで当事務所では、この「解釈運用基準」のポイントを【全13回】に分けて、できるだけわかりやすく整理してご紹介することにしました。
本シリーズの記事一覧(内部リンク付き)
✔ 風営法との違いって何?
✔ 自分のお店は、どの分類に当てはまる?
✔ 許可の取り方・守るべきルールは?
こうした実務で役立つ内容を中心に、読みやすく解説していきます。
トラブルを避け、安心して営業を続けるために、ぜひ気になる回から読んでみてください。
なお、本記事は「風俗営業等の解釈運用基準(警察庁生活安全局通知)」の令和7年6月28日現在の内容に基づいて作成しています。
今後、通達の改正や新たな運用指針が出される可能性もあるため、最新情報については必ず公的機関または専門家にご確認ください。
【第2回|風営法ガイド】「接待」って何?うっかり違反しがちな営業の境界線
「うちは接待してないから大丈夫」…本当にそうですか?
キャバクラ、ホストクラブ、ガールズバー、ラウンジ、コンセプトカフェ(コンカフェ)…
接客や会話を重視するさまざまな業態が登場するなか、開業相談でよく聞くのがこの言葉:
「うちは接待してないつもりです」
しかし、“つもり”と“法律上の判断”はまったく別です。
知らずに「接待」に該当する行為をしていた場合、無許可営業とみなされ、営業停止や許可取消し、さらには刑事罰の対象になることも。
この記事では、風営法第2条に基づく「接待」の定義とその境界線を、具体例とともにわかりやすく解説します。
「接待」の定義とは?
風営法では、「接待」を次のように定義しています:
歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと (風営法 第2条第3項)
ポイントは、「もてなす」行為であり、単なる接客とは明確に区別されます。
実務上の判断基準としては、“歓楽的な雰囲気の中で、特定の客に特別なサービスを提供しているか”が重要です。
🔍 解釈運用基準で「接待」とされる具体的行為
以下は、風営法における「接待」として判断される典型例です(警察庁「解釈運用基準」より):
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特定少数の客のそばにはべり、継続して談笑したり飲み物をつぐ
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客に歌を勧めたり、手拍子・拍手・賞賛などで盛り上げる
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客と一緒にカラオケで歌う
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特定の客と身体を接触しながら、または継続して一緒に踊る
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客と一緒に遊戯・ゲーム・競技などを行う
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手を握る・腕を組む・身体に触れるなどの接触行為
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飲食物を口元に差し出して飲食させる行為
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特定の客のためにショー・歌・演出を提供する場合(専用席など)
✅ 重要ポイント
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「誰が行ったか(社員かアルバイトか)」ではなく、「どんな行為をしたか」で判断されます
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カウンター越しであっても、行為の内容によっては接待とされます
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制服着用・ロールプレイ等が“歓楽的雰囲気の演出”とみなされることもあります
よくある誤解:これは接待?セーフ or アウト?
行為内容 | 判断例 |
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スタッフが客と長時間会話 | ✅ 接待の可能性あり |
お客にドリンクを注ぐ | ✅ 接待の典型例 |
客と乾杯を繰り返す | ✅ 接待と判断されやすい |
カラオケで一緒に歌い盛り上げる | ✅ 接待とされる可能性大 |
ゲームで盛り上がる(コンカフェなど) | ✅ 場合によって接待に該当 |
カウンター越しでの接客 | ⚠ 行為内容によっては接待 |
全員に同じ対応(例:居酒屋) | ❌ 通常の接客=非該当 |
❌ 接待に当たらないとされる行為の具体例
警察庁の基準では、以下のような行為は接待には該当しないとされています。
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お酌や水割りづくりをしても、すぐにその場を離れる
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客の後方で待機し、必要に応じて酒を提供する
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カウンター内で注文を受けて提供するだけの行為
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不特定多数の客に対して拍手やカラオケの応援をする
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社交儀礼上の握手や、酔客の介抱に伴う一時的な接触
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客同士がゲームを楽しんでいるだけの場合
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ダンススクールなどでの指導目的のダンス
「性風俗関連特殊営業」「異性紹介業」も注意が必要
風営法第2条では、通常の風俗営業(接待を伴う飲食店や遊技場など)とは別に、
「性風俗関連特殊営業」「異性紹介業等」を明確に定義し、より厳しい規制を課しています。
【性風俗関連特殊営業】
以下のような業種が該当します:
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無店舗型風俗営業(デリヘル・ホテヘルなど)
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店舗型風俗(ソープ、ピンサロ、イメクラなど)
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映像提供型風俗(個室ビデオ等)
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アダルトショップや出会い系喫茶等
これらは、公安委員会への届出義務があり、営業可能な地域も大幅に制限されます。
【異性紹介業等】
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出会い系サイト、マッチングアプリ等の運営
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利用者に異性を紹介・媒介するサービス
こちらも警察署への届出義務や記録保存義務等が課される業種です。
✅「接待がない=関係ない」と思いがちですが、業種によっては別条項で規制対象となることがあります。
【実例】思わぬ違反につながる「接待」グレーゾーン
❌ NG例①:カウンター越しの“乾杯&雑談”
「うちはカウンターだけだし大丈夫」と思っていたが、
常連客と毎回乾杯・雑談 → 接待認定、営業停止処分に
❌ NG例②:制服でゲーム接客(コンカフェ系)
スタッフが制服姿でお客とゲーム対戦 → “演出性あり”で接待認定
制服・ロールプレイ・演出効果も接待性を判断する材料に
❌ NG例③:指名客とのボディタッチ
「あいさつ代わり」のボディタッチ → 明確な身体接触は即NG
→ 無許可営業で立件されたケースも
✅ まとめ|「接待」の判断基準を正しく理解しよう
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「接待」とは“歓楽的雰囲気の中で、客をもてなす行為”
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隣に座らなくても、行為内容で接待と認定される
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制服や演出、ゲーム参加なども接待の要素になる
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接待がなくても、性風俗関連や異性紹介に該当する可能性もある
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解釈運用基準(警察庁)に従った明確な線引きが重要
🚨無許可営業は重大なリスクに
万が一「接待」に該当する営業を無許可で行っていた場合、最大5年の拘禁刑または1,000万円の罰金(または併科)という重い罰則があります。
「うちは大丈夫」ではなく、「明確に線引きできているか?」が大切です。
このシリーズの目的
風営法の条文を読むだけでは、実際の運用ルールまではわかりません。
このシリーズでは、「解釈運用基準」の実務的なポイントをできる限りわかりやすく、全体で13回に分けて順番に解説していきます。
✅ 本記事の内容は、令和7年6月28日現在の解釈運用基準に基づいています。
通達は今後改正される可能性がありますので、最新情報は行政書士や警察署にご確認ください。
次回予告
ホストクラブ・キャバクラの開業をお考えの方へ
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