2026年(令和8年)1月1日から、行政書士法が改正・施行されます。
特に影響を受けるのが、
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車庫証明の取得
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自動車の新規登録・名義変更・住所変更
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軽自動車の届出 などの
「書類作成+官公署への提出」をディーラー等が有償・サービスの一環として行っているケースです。
これまで「サービス」「登録代行料」「手数料0円」など、さまざまな名目で行われてきた実務が、
今後は行政書士法違反として厳しく見られる可能性が高まります。
この記事では、
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行政書士法改正で何が変わるのか
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ディーラーのどんなやり方がリスクになるのか
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違反を避けるために今から何を見直すべきか
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行政書士にどう関わってもらえばよいのか
を、ディーラー勤務経験のある行政書士として、できるだけわかりやすく整理します。
※本記事の内容は一般的な解説であり、個別事案についての法的判断を行うものではありません。
行政書士法改正のポイントをディーラー目線で整理
施行日と改正の概要
今回の改正は「行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)」として
令和7年6月13日に公布され、令和8年1月1日から施行されます。
主な改正ポイントは次の5つです。
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行政書士の使命の明確化(第1条)
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行政書士の職責の明確化(第1条の2)
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特定行政書士の業務範囲の拡大(第1条の4)
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業務の制限規定(第19条)の趣旨の明確化
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両罰規定(第23条の3)の整備
このうち、自動車販売店・ディーラーの実務に直撃するのが第19条と両罰規定です。
第19条「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」とは?
改正後の行政書士法第19条第1項には、
他人の依頼を受け いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第1条の3に規定する業務を行うことができない
という文言が明記されます。
つまり、請求書や見積書に
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「登録代行料」「車庫証明代行料」「事務手数料」
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「サービス料」「パック料金」
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「手数料0円」「代行料無料」
などと書いていても、実質的に対価を受けて官公署提出用の書類を作成していれば「報酬を得て」にあたる
という考え方が、条文上はっきり示されたことになります。
ポイントは、
「新しいルールができた」ではなく「これまでの解釈を条文で明文化し、取締りを強化した」という位置づけだという点です。
両罰規定で「会社」も罰せられる時代に
もう一つ大きな変更が、両罰規定の拡大です。
改正により、第19条違反についても、
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違法な書類作成をした「担当者本人」
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その業務をさせていた「販売店・会社」
両方が処罰対象となります。
罰則は概ね、
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担当者:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
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会社:100万円以下の罰金
というイメージです。
「現場がサービスのつもりでやっていただけなので……」
という説明では、会社の責任を免れにくい時代になってきている、と考えておくのが安全です。
どんなディーラー実務が「危険ゾーン」になるのか
よくある運用パターンとリスク
多くの販売店で、次のような運用が行われているのではないでしょうか。
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見積書・注文書に
「登録代行料」「車庫証明代行料」を一式で記載 -
営業スタッフや登録担当者が
申請書・委任状・譲渡証明書などを作成 -
警察署・運輸支局・軽自動車検査協会へ提出・受領
お客様から見ると、
「お店が全部やってくれている」状態です。
改正後は、このようなスキームが、
行政書士ではない者が、報酬を得て官公署に提出する書類を作成・提出している
と評価され、第19条違反として問題視されるリスクが高い形になります。
「無料サービス」「手数料0円」が通用しない理由
よくあるのが、
「代行料はいただきません。サービスでやっておきますよ。」
というパターンです。
しかし、ディーラーと顧客の関係はあくまで車両販売や整備等の「商取引」であり、
書類作成がその取引の一部として組み込まれている限り、
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車両本体価格や諸費用の中に、書類作成の手間やコストが織り込まれている
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顧客は取引全体の中で、実質的にその対価を支払っている
と評価されやすくなります。
その結果、
「無料」「サービス」「手数料0円」と表示していても、
実態としては「報酬を得て」書類を作成している
とみなされる可能性が高いのです。
条文にわざわざ「いかなる名目によるかを問わず」と書かれたのは、
「名目を変えればセーフ」という逃げ道をふさぐためと考えてよいと思います。
対象になるのは自動車登録申請書だけではない
行政書士法の対象は、
官公署に提出する書類(およびそれに代わる電磁的記録)
全般です。
自動車関連でいえば、たとえば:
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自動車登録申請書(OCR)
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軽自動車届出書
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車庫証明申請書・自認書・使用承諾書
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委任状
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譲渡証明書
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申請依頼書 など
これらはすべて、
他人の依頼を受けて報酬を得て作成すれば、行政書士の業務範囲に入ってくることに注意が必要です。
OSS・業界団体スキームはセーフ?注意すべきポイント
自販連等に認められた特例
行政書士法施行規則では、
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自動車販売協会連合会(自販連)
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自動車整備振興会(日整連)
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全国軽自動車協会連合会(全軽自協)
など、一定の団体が構成員のために行うOSS(自動車保有関係手続ワンストップサービス)の電子申請データ作成については、行政書士法第19条の適用除外とする仕組みが設けられています。
「OSSだから大丈夫」は誤解です
ここで誤解しやすいのが、
「OSSを使っているから、うちは行政書士法とは関係ない」
という認識です。
適用除外が認められているのは、あくまで団体そのもの(自販連・日整連・全軽自協など)であって、
個々の販売店・整備工場ではありません。
紙の申請であれOSSであれ、
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顧客のために
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報酬を得て
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申請書類を反復継続して作成・提出する
という行為は、原則として行政書士の独占業務であると考える必要があります。
ディーラーが取れる選択肢は2つだけ
結論として、改正後にディーラー様が取るべきスタンスは非常にシンプルです。
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お客様本人に申請書を書いてもらう(本人申請)
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行政書士に申請書作成・申請代理を正式に委任する
ディーラーが関われるのは、
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必要書類の案内
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記載例の提供
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書類の受け渡し・取次ぎ
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スケジュール調整・進捗連絡
といった「窓口業務・事務負担」の範囲にとどめるのが、安全な運用です。
今から見直しておきたい3つの実務ポイント
見積書・注文書・料金表の書き方を見直す
NGになりやすい表記例:
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「登録代行料 一式」
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「車庫証明代行料 一式」
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「登録・車庫証明おまかせパック」
これらは、ディーラー自身が申請書作成・代理をしている印象が強い表現です。
たとえば:
車庫証明・登録手続費用(内訳)
・行政書士報酬 ○○円
・ディーラー事務手数料 ○○円
・法定費用(証紙代・手数料等) ○○円
といった形で、行政書士報酬と自社の事務手数料をきちんと分けて表示しておくと、
後から説明がしやすくなります。
行政書士との契約・委任状の整備
ディーラー ↔ 行政書士 の間で、
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業務範囲
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報酬
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情報の取扱い
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責任分界点
などを明文化した業務委託契約書を作成しておくと安心です。
あわせて、
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使用者(お客様) → 行政書士 への委任状をきちんと取る
ことで、
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申請の代理人は行政書士である
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ディーラーは「取次ぎ窓口」である
という関係を明確にできます。
社内マニュアル・営業トークのアップデート
現場の営業スタッフ・登録担当の方には、
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行政書士法改正の概要(とくに第19条と両罰規定)
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NGになる言い回し
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安全な説明の仕方(トーク例)
をまとめた社内マニュアルを用意しておくのがおすすめです。
NGにしたい言い回しの例:
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「当社で全部申請まで代行します」
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「車庫証明も登録も、手数料0円で当社がやっておきます」
OKな方向性の例:
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「車庫証明・登録の申請書の作成・提出そのものは、当社提携の行政書士に依頼しています。」
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「当社では、必要書類のご案内・受け渡し・日程調整など、窓口業務を担当いたします。」
現場がそのまま使える定型トークを用意しておくと、
コンプライアンスと実務の両立がしやすくなります。
北九州・苅田・行橋エリアのディーラー様へ:行政書士トラスト事務所にできること
当事務所(行政書士トラスト事務所)では、
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元・自動車販売店勤務としての現場感覚
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行政書士としての法令知識
の両方を活かし、「現場の負担を増やしすぎないコンプライアンス対応」を一緒に考えていきます。
サービス提供エリア
現在、車庫証明・自動車登録まわりのサポートは次のエリアに限定して承っています。
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北九州市小倉北区
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北九州市小倉南区
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京都郡苅田町
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行橋市
上記エリア以外からのご相談については、内容によってはお受けできない場合もありますが、
可能な範囲でご案内いたしますので、まずは一度お問い合わせください。
スポット(1件ごと)のご依頼をお考えのディーラー様へ
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繁忙期だけ一部の案件をお願いしたい
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一部のエリア(たとえば苅田・行橋分)だけ外注したい
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まずは1件試してみて、問題なければ継続も検討したい
といった場合は、1件ごとのスポット依頼として承ります。
(※対応エリアは上記4地域に限ります。)
スポット依頼の流れ(イメージ)
お問い合わせ
お問い合わせフォームまたはメールにて、以下をお知らせください。
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手続きの種類(例:新規登録/名義変更/住所変更 など)
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車庫証明が必要な場合:車庫の所在市区町村
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使用者住所(市区町村レベルでOK)
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御社の所在地
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ご希望の納期(あれば)
費用とスケジュールのご案内
内容とエリアを確認した上で、
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代行報酬の目安
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法定費用(証紙代/ナンバー代など)
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申請〜完了までのおおよそのスケジュール
を、できるだけ早くご案内いたします。
必要書類のご準備・お預かり
御社にてご準備いただいた必要書類
(例:委任状、車庫証明の添付書類、申請関連書類など)
をお預かりします。
※書類の不備チェックや、行政提出用の整え方などは、当事務所でサポートいたします。
行政書士が申請・受領を代行
行政書士が責任を持って、
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車庫証明:警察署
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自動車登録:運輸支局・軽自協
へ申請・受領を行います。
完了後、必要な書類・ナンバー(必要に応じて)を、
御社へお渡し(または郵送)いたします。
継続的な「提携行政書士」としての関与
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毎月コンスタントに台数があるので、登録担当を外部に置きたい
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小倉北区・小倉南区・苅田・行橋エリアで、顔の見える行政書士にまとめて任せたい
という場合は、“提携行政書士”として継続的に関わる形も想定しています。
たとえば、
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「車庫証明だけ外注」「登録+車庫証明を一括で外注」など、外注範囲のご相談
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見積書・注文書・委任状などの書式の見直し案
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行政書士法改正を踏まえた営業トークやフローの整理
などをセットで行い、
「コンプライアンス&実務」を同時に整えるお手伝いが可能です。
業務フローの診断・社内研修
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今の車庫証明・登録のやり方が、改正後も大丈夫なのか不安
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うちはグレーなのかセーフなのか、一度プロの目で見てほしい
という場合には、次のようなご相談も可能です。
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現行フロー・見積書・注文書・委任状などの簡易チェック
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行政書士法改正を踏まえたリスク箇所の指摘
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店長様・登録担当者様向けのミニ研修(オンライン/対面・時間や内容は応相談)
「改正の内容はなんとなく分かったけれど、結局どこから手を付ければいいか分からない」
という状態を一度ここでスッキリさせておくと、2026年以降の運用がぐっと楽になります。
料金について
報酬額は、ご相談内容に応じて個別にお見積りいたします。
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手続きの内容(新規/名義変更/住所変更など)
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車庫証明の有無
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エリア(小倉北・小倉南・苅田・行橋のどこか)
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月あたりのおおよその件数・繁忙期のボリューム
などを伺ったうえで、
「この内容であれば、1件あたりおおよそ◯◯円〜◯◯円くらい」
という形で、無理のない金額感を一緒に考えます。
まとめ:法改正を「ピンチ」ではなく「チャンス」に
2026年1月からの行政書士法改正は、
これまで慣行で続けてきた「ディーラーによる車庫証明・登録代行」を、
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法律に沿った形に見直す必要がある
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同時に「コンプライアンスに強いディーラー」に生まれ変わるチャンスでもある
ということを示しています。
そのまま放置してしまうと、
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担当者個人だけでなく会社も罰則対象になるリスク
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「コンプライアンス違反の会社」としての信用低下
につながりかねませんが、
今のうちにフローを整えておけば、むしろお客様からの信頼アップにもつなげることができます。
お問い合わせのイメージ
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「うちの現在のやり方が、改正後も大丈夫か一度見てほしい」
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「提携行政書士として、車庫証明・登録を任せたい」
-
「見積書・注文書の書き方を一緒に見直してほしい」
といった場合は、メールまたはお問い合わせフォームから、
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御社名・店舗名
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ご担当者様のお名前
-
おおよその月間登録台数
-
ご相談内容の概要
をお知らせください。
行政書士法改正の内容を踏まえつつ、現場の負担をできるだけ増やさない形での解決策を、
一緒に考えていきましょう。
Contact







