【企業向け】育成就労制度の受入れ準備チェックリスト|開始時期・要件・人数枠・日本語講習まで行政書士が整理

育成就労制度は、従来の技能実習制度を発展的に解消し、日本の人手不足分野で 「人材を育成し、確保する」 ことを目的に創設される新制度です。開始は 令和9年4月1日(予定) とされており、企業側は「制度開始を待ってから検討」では間に合わない可能性があります。

本記事は、受入れ企業(育成就労実施者) の担当者向けに、制度の全体像ではなく、実務で必要になる“準備事項” を中心に整理します。

本記事は、2026年1月時点で公表されている法令・官報・公表資料等に基づき作成しています。育成就労制度は施行前であり、今後、分野別運用方針や実務運用が更新される可能性があります。最新情報は関係省庁等の公表資料で必ずご確認ください。

目次

育成就労「受入れ企業」がまず理解すべき制度の骨格

育成就労の期間とゴール

育成就労は原則 3年間 の就労を通じて、対象分野で 特定技能1号水準 の技能を身につけた人材を育成し、分野の人材確保につなげる設計です。

受入れ分野は「特定技能と原則一致」だが例外あり

受入れ対象は「育成就労産業分野」(特定技能の特定産業分野と原則一致)ですが、国内での育成になじまない分野は対象外となり得る ため、最終的には 分野別運用方針 の確定を前提に判断する必要があります。

企業が準備すべき実務は5領域

制度開始までに、企業が整えるべきポイントは大きく5つです。

※以下は、現時点で公表されている資料等に基づく整理であり、今後、分野別運用方針等により具体的な運用が変更される可能性があります。

(1) 受入れ体制:責任者・指導員・生活相談員(常勤・講習修了など)

受入れ企業には、育成就労の実施体制として、少なくとも以下の設置・運用が求められる方向で整理されています(※詳細は関係省令等の確定・分野別運用方針の確認が前提)

  • 育成就労責任者

  • 育成就労指導員

  • 生活相談員

いずれも「常勤」や「養成講習修了(過去3年以内)」など、形式要件が絡むため、人選と教育計画を先に作るのが安全です。

(2) 育成就労計画:認定制(=書面の精度が許可・不許可に直結)

育成就労は、外国人ごとに 育成就労計画 を作成し、認定を受ける設計です。計画には「期間」「業務・技能目標」「日本語能力目標」等が入り、後日の実地検査等とも整合が求められます。 

企業側としては、
求人票・雇用契約・教育訓練計画・OJT記録・賃金規程 など、社内文書の整合性を先に作っておくのが実務上の近道です。

(3) 人数枠:常勤職員数に応じた上限(技能実習の経過措置との関係も注意)

育成就労の受入れ人数は、基本的に 常勤職員数に応じた上限 が設けられます。また、制度移行期は「技能実習の経過措置」により、技能実習生が在籍するケースがあり得ます。

この移行期は、技能実習の人数が“育成就労としてカウントされる取扱い” など、計算上の注意点が出てくる整理が示されています。 

結論としては、制度開始直前に慌てないために、今のうちに次をやっておくのが現実的です。

  • 常勤職員数の定義に沿って「枠計算ができる人事データ」を整備

  • 既存の技能実習の在籍状況(号数・期間)を棚卸し

  • 受入れ人数の年次計画(3年合計の視点)を作る

(4) 日本語:就労開始前A1/終了までにA2目標(講習100時間等)

企業が見落としやすいのが 日本語講習の実装 です。
制度設計として、就労開始前までのA1相当、さらに就労中にA2目標の講習機会(100時間等)を提供する枠組みが整理されています(※試験合格者は不要等の整理あり)。

ここは「やります」と言うだけでは足りず、実務としては以下まで準備しておく必要があります。

  • 認定日本語教育機関等との契約方針(外部委託か内製か)

  • 受講管理(出席・時間・学習記録)と費用負担の設計

  • 現場シフトと講習時間の両立(繁忙期ほど破綻しやすい)

(5) 転籍(本人意向):企業の人材定着戦略が制度上“可視化”される

育成就労では、一定要件の下で 本人意向による転籍 を認める方向で整理されています。転籍制限期間(1年以上〜2年以下の範囲)や、技能・日本語能力などが要件として分野別に設定される想定です。 

企業側としては、制度開始後に「突然辞める」の問題として捉えるのではなく、制度設計上、

  • 昇給・評価制度

  • キャリアパス(特定技能1号への移行支援)

  • 相談体制・ハラスメント防止・住居支援

  • 苦情処理(早期発見)

を整備して、転籍が起きにくい環境を作ることが現実的なリスク管理になります。

監理支援機関(旧:監理団体)との付き合い方が変わる

監理支援機関は許可制で、要件が厳格化される整理が示されています(債務超過の有無、常勤役職員数、外部監査人、母国語相談体制等)。

受入れ企業側の実務として重要なのは、

  • 「どの監理支援機関でも同じ」ではなくなる(品質差が出やすい)

  • 監査・実地確認の頻度、是正指導の実効性が問われる

  • 監理支援費の説明責任(対外的にも)

という点です。
契約前に、監査の実施方法/報告書の形式/緊急対応/相談体制 を確認しておくのが安全です。

送出し費用の上限(“月給2か月分”)と、企業の説明責任

育成就労では、外国人が送出機関に支払う費用に上限を設ける整理が示されています(「月給2か月分」など)。 

企業側は「送出機関の話だから関係ない」では済まず、少なくとも、

  • 本人が過大な費用負担をしていないか(確認の仕組み)

  • 不適切な手数料や“ブローカー介在”を排除できているか

  • 説明資料として社内外に示せるか

が、リスク管理上のポイントになります。

いつ、何をすべきか:制度開始までの企業向けロードマップ

現時点で「分野別運用方針」等が今後公表・確定していく前提ではありますが、企業側の準備は次の順が合理的です。 

フェーズ1:いま〜(社内設計)

  • 受入れ目的の明確化(特定技能1号までの育成を前提にした人材戦略)

  • 現場職種の棚卸し(業務区分に適合するか)

  • 日本語講習・教育計画(外部委託先候補のリスト化)

フェーズ2:運用方針・省令確定後(制度適合)

  • 分野別運用方針に沿った受入れ人数・要件の最終確認

  • 体制要件(責任者・指導員・生活相談員、講習等)の充足

  • 育成就労計画(様式・添付資料)を想定した社内文書整備

フェーズ3:開始直前(実装)

  • 講習スケジュールとシフトの確定

  • 相談・苦情対応、住居、生活支援の運用開始

  • 監理支援機関との監査運用(頻度・報告・是正フロー)を定着

よくある質問

Q1. 分野別運用方針・運用要領は、いつ公表されますか?

A.
現時点では、分野別運用方針・運用要領の公表時期は明らかにされていません。
これらの詳細については、今後、内容が整理され次第、出入国在留管理庁などの関係省庁の公式ウェブサイトで順次公表される予定です。

そのため、受入れを検討している企業は、現時点では制度の基本的な枠組みを理解した上で、最新の公式発表を随時確認しながら準備を進めることが重要です。

Q2. 施行前(2027年4月1日以前)に、受入れの契約や準備を進めても問題ありませんか?

A.
育成就労制度は、2027年4月1日以降に開始される制度であるため、
それ以前に 育成就労として外国人を受け入れることや、在留資格に関する申請・認定を行うことはできません

一方で、施行前の段階から、

  • 社内体制の整備

  • 育成計画や教育体制の検討

  • 日本語講習や生活支援の準備

  • 監理支援機関の選定・比較

といった 受入れに向けた準備を進めること自体は問題ありません
むしろ、育成就労制度では体制要件や計画内容が重視されるため、制度開始直前から準備を始めると、実務が間に合わなくなる可能性があります。

Q3. 現在、技能実習生を受け入れていますが、自動的に育成就労へ切り替わりますか?

A.
いいえ、技能実習生が自動的に育成就労へ切り替わるわけではありません
育成就労制度の開始にあたっては、技能実習制度に関する経過措置が設けられており、施行時点で技能実習として在留している方は、原則としてその在留資格のまま取り扱われます。

そのため、企業側は、

  • 現在受け入れている技能実習生の在留期間

  • 施行時点での在留資格の状況

  • 将来的に特定技能への移行を想定するかどうか

を整理した上で、個別に対応方針を検討する必要があります

Q4. 育成就労では、途中で人が辞めてしまう(転籍される)リスクは高くなりますか?

A.
育成就労制度では、一定の条件を満たした場合に、本人意向による転籍が認められる仕組みが導入される予定です。
これは、技能実習制度で問題となっていた人権面への配慮を強化するための制度設計です。

一方で、企業にとっては「突然辞められる制度」と感じられることもありますが、実務上は、

  • 適切な労働条件の説明

  • 育成・評価の見える化

  • 日本語学習や生活面の支援

  • 相談しやすい体制づくり

を行うことで、転籍リスクを下げることは十分可能です。
育成就労では、単なる雇用ではなく「育成と定着」を前提とした受入れ体制が求められます。

まとめ:企業は「人材戦略+監査対応+日本語」をセットで準備する

育成就労制度は、単なる受入れ制度ではなく、教育・定着・権利保護・監査 まで含めて設計されています。
企業側は「募集が始まったら考える」のではなく、制度開始までに、

  • 体制(責任者・指導員・生活相談員)

  • 育成就労計画(文書整備)

  • 人数枠の算定と年次計画

  • 日本語講習の実装(100時間等の運用)

  • 転籍を踏まえた定着戦略

を準備しておくことが、最終的な採用コスト・離職リスクを下げる近道になります。 

行政書士が関与できる実務の考え方(育成就労制度)

育成就労制度は、施行前の段階であり、分野別運用方針や詳細な運用は今後順次整理・公表される予定です。

そのため、行政書士が関与できる実務についても、「企業の実務そのものを担う」という形ではなく、制度に適合する形で整理・設計する支援が中心となります。現時点で、行政書士の関与が想定される主な領域は、次のとおりです。

① 制度への適合性に関する整理・助言

育成就労制度の趣旨や基本構造を踏まえ、

  • 対象となる分野・業務区分の整理

  • 特定技能制度との関係性の整理

  • 技能実習制度からの移行期(経過措置)の考え方の整理

などについて、制度上の前提を誤らないための整理・助言を行います。

制度の前提理解を誤ると、その後の計画や手続全体が成立しなくなるため、初期段階での整理が重要となります。

② 書類・計画設計に関する支援

育成就労制度では、計画と実務、書類の整合性が重視される制度設計が示されています。

そのため、行政書士は、

  • 育成就労計画に盛り込む事項の整理
    (業務内容・技能目標・日本語能力目標等)

  • 雇用契約書や労働条件通知書との整合性の確認

  • 社内文書・管理様式を制度に適合する形で整理する支援

といった、書類・計画の設計面を中心とした支援を行うことが想定されます。

※ 実際の教育・労務運用そのものを代行する立場ではありません。

③ 在留資格に関する手続支援

育成就労制度の開始後は、

  • 育成就労に関する在留資格の申請・届出

  • 将来的な特定技能1号への移行を見据えた制度整理

  • 関連する在留資格の変更・更新手続

など、在留資格に関する手続支援が、行政書士の中心的な業務領域となります。

育成就労制度において、行政書士は企業の人事・教育・労務実務を代行する立場ではありませんが、
それらの実務が制度に適合する形で設計・整理されているかという観点から、制度面・書類面を中心に支援を行います。
制度理解と実務設計を分けて考えることが、施行前段階では特に重要です。

当事務所ができること

育成就労制度は、単に制度を理解していれば対応できるものではなく、

  • 書類の整合性

  • 受入れ体制設計の妥当性

  • 将来の監査・実地検査への耐性

までを見据えた、実務レベルでの準備が求められます。

当事務所では、
「とりあえず申請する」ための支援ではなく、
制度開始後も破綻しない受入れ設計
を重視しています。

具体的には、

  • 制度の最新情報を踏まえた個別相談

  • 受入れ企業ごとの実務整理

  • 育成就労計画・社内文書の設計支援

  • 将来の特定技能1号への移行を見据えた制度設計

までを、一貫してサポートします。

日本語講習に関する当事務所の関与について

育成就労制度では、日本語能力に関する要件や講習機会の確保が制度上重要な位置づけとなっています。

当事務所の代表は、日本語教師として10年以上の指導経験を有しており、
行政書士としての制度理解に加え、日本語教育の実務経験を踏まえた支援が可能です。

具体的には、

  • 制度上求められる日本語能力水準(A1・A2相当等)を踏まえた講習計画の整理

  • 現場の勤務形態やシフトを考慮した、現実的な講習スケジュール設計

  • 外部講師・教育機関を活用する場合の役割分担の整理

  • 「形だけ整えた計画」にならないための実務目線での助言

などについて、日本語教育の知見を活かして関与できる点は、当事務所の大きな特徴です。

育成就労制度では、書類上は日本語講習が整っていても、実務として機能しなければ制度運用上のリスクとなり得ます。

制度と現場の双方を理解した立場から、無理のない日本語教育体制を設計できることが、日本語教育経験を持つ行政書士ならではの強みであると考えています。

育成就労制度は、準備段階での判断ミスが、施行後の是正指導や運用上のトラブルにつながりやすい制度です。
検討段階から専門家を交えて整理することで、無駄な修正コストや人材流出リスクを抑えることができます。

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