【2025年改正】トラック運送業者必見!貨物自動車運送事業法 | 法改正まとめ

改正貨物自動車運送事業法(トラック法)まとめ

~2025年4月施行と6月公布のポイントをわかりやすく解説~

1. 改正の背景

物流業界では「2024年問題」と呼ばれるドライバー不足や長時間労働の是正が大きな課題となっています。
2024年4月から自動車運転業務に時間外労働の上限規制が始まり、人材確保や運賃の低さ、多重下請け構造といった問題が一層顕在化しました。

こうした状況を踏まえ、トラック事業を健全化し、ドライバーの労働環境改善と安全輸送を実現するために「貨物自動車運送事業法」が段階的に改正されています。

  • 令和6年法律第23号(2024年5月15日公布 → 2025年4月1日施行)

  • 令和7年法律第60号(2025年6月11日公布 → 今後順次施行)


2. 【2025年4月1日施行】令和6年法23号の改正内容

(1) 運送契約時の書面交付が義務化

契約時に、運賃総額・付帯作業料金・燃料サーチャージ・支払条件などを記載した書面(または電子交付)を必ず交付しなければならなくなりました。
書面は1年間保存が必要です。

書面交付の義務付けの図出典:国土交通省「改正貨物自動車運送事業法について」(一部抜粋)

👉 ポイント:契約内容を「見える化」し、トラブルを防止する仕組みです。


(2) 健全化措置の努力義務化

元請事業者は以下のような措置をとるよう努めなければなりません

  • 運送に必要なコストを事前に把握する

  • 荷主が提示する運賃が低すぎる場合は交渉する

  • 委託先が再々委託しないよう条件を設ける

健全化措置のイメージ図

出典:国土交通省「改正貨物自動車運送事業法について」(一部抜粋)

👉 ポイント:実質的に「低すぎる運賃の回避」と「多重下請け防止」を促す内容です。


(3) 実運送体制管理簿の作成義務

元請事業者は、運送を実際に行う事業者や請負階層を記録した「実運送体制管理簿」を作成・保存しなければなりません。

👉 ポイント:下請けの実態を可視化し、多重構造をチェックする仕組みです。


(4) 業務記録の対象拡大

荷待ち時間・荷役作業の記録義務が、従来の大型車だけでなく 全車両 に拡大されました。

👉 ポイント:長時間労働の是正と労働環境改善につながります。


(5) 軽トラック事業者への規制強化

軽トラ(貨物軽自動車運送事業者)にも新たな規制が導入されました。

  • 安全管理者の選任・届出

  • 管理者講習の受講

  • 初任運転者への特別指導・適性診断

  • 業務記録・事故記録の作成

  • 重大事故の国交省への報告

👉 ポイント:軽トラ事業も「安全管理の対象」として扱われるようになりました。


3. 【2025年6月11日公布】令和7年法60号の改正内容

(1) 再々委託の制限

真荷主から引き受けた貨物について、二重三重の再委託を防ぐため、再々委託の制限が設けられました。

👉 ポイント:多重下請け構造を是正し、責任の所在を明確化します。


(2) 許可の更新制

トラック事業の許可は 5年ごとの更新制 となりました。
更新審査を通過できなければ許可を失うことになります。

👉 ポイント:今後は「許可を維持するためのコンプライアンス体制」が重要です。


(3) 適正原価と運賃規制

国交省が「燃料費・人件費・安全経費」を反映した 適正原価 を算定・告示できるようになりました。
事業者は、その原価を下回る運賃・料金で受注・委託してはならないとされています。

👉 ポイント:「適正運賃の確保」が制度的に裏付けされました。


(4) 無許可事業者への委託禁止

いわゆる「白トラ」(無許可事業者)に委託することが禁止されました。
違反すれば行政処分・罰則の対象となります。

👉 ポイント:荷主側も「安いから白トラに委託」は通用しなくなります。


(5) 労働者の処遇改善

運転者などの労働者に対して、能力に応じた処遇や公正な賃金を支払うことが義務付けられました。

👉 ポイント:人材定着・待遇改善が法律で求められる時代になりました。


4. 会社が確認すべきチェックリスト

改正内容を踏まえ、各事業者が確認すべき事項をまとめました。

契約書の書面交付を行っているか

健全化措置(運賃交渉・再々委託制限など)の体制を整えているか

実運送体制管理簿を作成・保存しているか

荷待ち・荷役の業務記録を全車両で残しているか

軽トラ事業者の場合、安全管理者の選任・講習を実施しているか

許可更新に向けたコンプライアンス体制を整備しているか

委託先が「白トラ」ではないか確認しているか

ドライバーの賃金・処遇改善に取り組んでいるか


5. まとめ

今回の改正は、トラック事業者にとって「単なる規制強化」ではなく、業界全体の健全化と持続可能な物流を実現するための大きな制度改正です。

各会社が早めに対応を進めることで、取引先からの信頼を高めると同時に、安全で働きやすい環境づくりにつながります。


参考資料