2024年、台湾の半導体後工程大手ASEグループの日本法人であるASEジャパンが、北九州市若松区の市有地取得に向けて土地売買の仮契約を結んだというニュースが大きな話題になりました。
北九州市にとって、半導体産業の集積や「シリコンシティ北九州」の構想に関わる、非常に明るいニュースでした。
当事務所は北九州市小倉北区にあるため、このニュースには強い関心を持っています。
一方で、ニュースが出てから時間が経つと、気になるのは「その後どうなったのか」という点です。
2026年5月時点で確認できる情報を整理すると、ASEジャパンが北九州市と土地売買の仮契約を締結した事実は確認できます。また、2026年1月には北九州市長が台湾のASE主力工場を訪問し、協議が継続していることも確認できます。ただし、本契約締結、工場着工、操業開始まで進んだことは、現時点では確認できません。
この記事では、ASEジャパンの北九州進出計画のその後、北九州市の半導体産業の可能性、そして外国人技術者・外国企業・外国人起業家に関係する在留資格やビザ手続きについて、行政書士の視点から整理します。
この記事の更新ポイント
- 2024年当時の「ASEジャパン進出へ」というニュースを、2026年5月時点の情報で見直しています。
- 2024年7月31日、ASEジャパンと北九州市が土地売買の仮契約を締結したことは確認できます。
- 2026年1月、北九州市長が台湾のASE中壢工場を訪問し、協議継続・関係維持が確認されています。
- 一方で、本契約・工場着工・操業開始までは確認できません。
- 外国人技術者、外国企業、外国人起業家に関係する在留資格についても整理しています。
この記事でわかること
- ASEジャパンの北九州進出計画のその後
- 2024年の仮契約の内容
- 2026年の北九州市長による台湾ASE工場訪問
- 2026年5月時点で確認できること・確認できないこと
- 北九州市が半導体産業で注目される理由
- 外国人技術者・外国企業にとっての北九州市の可能性
- 半導体関連人材に関係する在留資格
- 行政書士トラスト事務所でサポートできること
- 1 ASEジャパンの北九州進出計画とは
- 2 2024年の仮契約は「進出決定」ではなく、交渉プロセスの一部
- 3 その後どうなったのか|2026年1月に北九州市長がASE中壢工場を訪問
- 4 なぜ時間がかかっているのか
- 5 それでも北九州市が半導体産業で注目される理由
- 6 九州全体で進む半導体産業の集積
- 7 外国人技術者にとっての北九州市の可能性
- 8 半導体関連人材に関係する主な在留資格
- 9 外国企業が北九州市へ進出する場合の注意点
- 10 外国人技術者の家族帯同も重要なテーマ
- 11 北九州市で外国人材を受け入れる企業が準備すべきこと
- 12 行政書士トラスト事務所ができること
- 13 さいごに|期待と現実を分けて、北九州の可能性を見る
- 14 北九州市での外国人雇用・ビザ申請をサポートします
ASEジャパンの北九州進出計画とは
ASEジャパンは、台湾のASEグループの日本法人です。ASEグループは、半導体の組立、パッケージング、検査など、いわゆる半導体の「後工程」を担う世界的な企業グループです。
半導体産業では、大きく分けて、設計、前工程、後工程、検査、物流、装置・材料など、さまざまな工程や関連産業があります。ASEが得意とする後工程は、半導体チップを実際に製品として使える状態にするために欠かせない重要な工程です。
2024年7月31日、ASEジャパンは、北九州市若松区の北九州学術研究都市に近い市有地について、北九州市と土地売買の仮契約を締結しました。報道や北九州市長会見の内容によると、対象となった土地は約16ヘクタールで、取得額は約34億円規模とされています。
このニュースは、北九州市にとって非常に大きな意味を持つものとして注目されました。理由は、北九州市が半導体関連産業の集積を進め、「シリコンシティ北九州」の構築を目指しているからです。
ASEジャパンのような世界的企業が北九州市に拠点を置く可能性があるということは、地域経済、雇用、人材育成、外国人技術者の受入れに大きな影響を与える可能性があります。
2024年の仮契約は「進出決定」ではなく、交渉プロセスの一部
ここで注意したいのは、2024年の土地売買仮契約は、直ちに「工場進出が正式決定した」という意味ではないという点です。
北九州市長は、2024年8月1日の定例記者会見で、ASEグループの100%子会社であるASEジャパンと土地売買の仮契約を締結したことは事実であると述べています。
一方で、この仮契約は、北九州市への進出に向けた交渉プロセスの過程であるとも説明されています。
つまり、ASEジャパン側が北九州市の学研都市エリアに関心を示し、今後の投資に向けた環境整備を円滑に進めるために仮契約を締結した、という位置づけです。この段階では、具体的な事業計画、工場の建設時期、操業開始時期、雇用人数などは明らかにされていませんでした。
ポイント
2024年のニュースは、北九州市にとって大きな前進でした。ただし、正確には「仮契約が締結された」「進出に向けた交渉プロセスが進んだ」という段階であり、「工場建設が正式決定した」と断定することはできません。
その後どうなったのか|2026年1月に北九州市長がASE中壢工場を訪問
では、ASEジャパンの北九州進出計画は、その後どうなったのでしょうか。
2026年5月時点で確認できる範囲では、2024年7月31日に土地売買の仮契約が締結されたことは確認できます。
一方で、本契約締結、工場建設の開始、操業開始、具体的な雇用計画などについては、明確に確認できる公表情報は見当たりません。
ただし、仮契約後も北九州市とASE側の関係が途切れているわけではありません。
2026年1月29日の北九州市長定例記者会見では、武内市長が、台湾訪問の際にASEの主力工場である中壢(チュンリー)工場を訪問したことを明らかにしています。市長は、同工場でクリーンルーム内の工程を見学し、説明を受けたとされています。また、この訪問について、仮契約以降の定期的な意見交換や意思疎通の一環であり、ASE側から熱烈な歓迎を受け、強固なパートナーシップと絆を再確認したという趣旨の説明をしています。
記者から「協議は継続中という理解でよいか」と問われた際、市長は「もちろんです」と答えています。つまり、現時点では工場建設が決定したとまでは言えませんが、北九州市とASE側の間で、継続的な関係維持と協議が行われていることは確認できます。
現時点での正確な整理
ASEジャパンの北九州進出については、2024年に土地売買の仮契約が締結されたことは確認できます。また、2026年1月には北九州市長がASEの台湾・中壢工場を訪問し、仮契約後も定期的な意見交換や関係維持が続いていることが確認できます。一方で、2026年5月時点では、本契約締結・工場着工・操業開始までは確認できません。
なぜ時間がかかっているのか
大規模な半導体関連施設の進出には、土地売買だけでなく、さまざまな条件整理が必要になります。たとえば、工場建設の時期、投資額、生産品目、補助金、インフラ整備、人材確保、国際情勢、市場環境などです。
半導体産業は、世界経済や安全保障の影響を強く受ける産業です。特に、米中関係、台湾情勢、半導体需要の変化、各国の補助金政策、サプライチェーンの再編などが、企業の投資判断に影響を与える可能性があります。
そのため、土地の仮契約が結ばれたとしても、すぐに本契約や工場建設へ進むとは限りません。企業側としては、長期的な事業採算、顧客需要、国際的な生産拠点の配置、日本政府や自治体との条件調整などを慎重に検討する必要があります。北九州市にとっても、期待が大きい案件である一方、確認できる事実と期待を分けて発信することが重要です。
それでも北九州市が半導体産業で注目される理由
ASEジャパンの計画がまだ検討・協議段階であるとしても、北九州市が半導体産業で注目されていること自体は重要です。
北九州市は、もともと製造業の基盤が強い都市です。鉄鋼、化学、機械、環境技術など、長い産業都市としての歴史があります。
さらに、北九州学術研究都市には、大学、研究機関、技術系人材が集まっており、研究開発や人材育成の面でも強みがあります。また、北九州市には港湾、空港、高速道路などの物流インフラがあります。
半導体産業では、部材、装置、製品の移動や国際物流が重要になるため、こうしたインフラは企業立地において大きな意味を持ちます。報道や産業メディアでは、北九州エリアに多くの半導体関連企業が集積していることも紹介されています。このような産業基盤、人材、物流、研究機関の存在が、北九州市の半導体産業における可能性を支えています。
九州全体で進む半導体産業の集積
北九州市だけでなく、九州全体で半導体産業への注目が高まっています。
熊本県ではTSMCの進出が大きな話題となり、関連企業の進出、雇用、住宅、交通、教育、生活環境など、地域全体にさまざまな影響を与えています。
半導体産業では、前工程、後工程、材料、装置、物流、研究開発、人材派遣、保守管理など、多くの関連産業が関わります。そのため、一つの企業が進出するだけでなく、周辺に関連企業や専門人材が集まることで、産業全体の厚みが増していきます。
北九州市が目指す半導体産業の集積も、単に一社の誘致だけではなく、関連企業、人材、研究機関、行政支援を組み合わせたエコシステムづくりが重要になります。
ASEジャパンの計画が今後どのように進むかは引き続き注目されますが、北九州市が半導体関連産業に力を入れていることは、地域の将来を考える上で重要な流れだといえます。
外国人技術者にとっての北九州市の可能性
半導体産業の発展は、外国人技術者にとっても大きなチャンスになる可能性があります。
半導体関連分野では、研究開発、設計、生産技術、品質管理、装置保守、システム管理、国際営業、通訳・翻訳、海外拠点との調整など、多様な人材が必要になります。
特に、台湾、中国、韓国、東南アジア、インド、欧米など、半導体産業に関わる国・地域の人材が日本で働く機会は、今後も増える可能性があります。
北九州市は、福岡市と比べると生活コストが比較的抑えられ、自然、都市機能、交通アクセスのバランスが取れた地域です。外国人技術者やその家族が日本で生活する場合、仕事だけでなく、住居、学校、医療、交通、日本語学習、家族の在留資格なども重要になります。
企業誘致が進む場合、外国人本人だけでなく、その配偶者や子どもの生活支援も必要になります。その意味で、北九州市の国際化や外国人支援体制は、産業発展とセットで考えるべき課題です。
半導体関連人材に関係する主な在留資格
外国人が日本で半導体関連の仕事をする場合、活動内容に応じて適切な在留資格を取得する必要があります。
ここでは、半導体関連分野で関係することが多い在留資格を整理します。
| 在留資格 | 想定されるケース |
|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務 | 半導体関連企業での技術職、設計、品質管理、システム関連、国際営業、通訳・翻訳、海外取引対応など。 |
| 高度専門職 | 高度な学歴、職歴、年収、研究実績などを有する専門人材。ポイント制による優遇措置がある。 |
| 企業内転勤 | 海外本社や海外関連会社から日本拠点へ転勤する場合。 |
| 経営・管理 | 外国企業が日本法人を設立する場合、または外国人が日本で会社経営・事業管理を行う場合。 |
| 家族滞在 | 就労資格等を持つ外国人の配偶者や子どもを日本へ呼び寄せる場合。 |
| 留学 | 日本の大学、大学院、専門学校などで半導体・工学・情報技術などを学ぶ場合。 |
重要なのは、会社名や職種名だけで在留資格が決まるわけではないという点です。実際には、本人の学歴・職歴、勤務先の事業内容、具体的な職務内容、報酬、雇用契約、勤務場所などを総合的に確認する必要があります。たとえば、同じ半導体関連企業で働く場合でも、研究開発、現場作業、装置保守、営業、通訳、管理職では、確認すべきポイントが異なります。
外国企業が北九州市へ進出する場合の注意点
半導体関連企業に限らず、外国企業が北九州市や福岡県内に拠点を設ける場合には、ビザだけでなく、会社設立、事務所確保、税務、社会保険、労務、銀行口座、許認可など、複数の手続きが関係します。
行政書士が対応できる部分と、司法書士、税理士、社会保険労務士、弁護士など他士業の専門分野になる部分があります。
特に、外国人経営者が日本に滞在して事業を行う場合には、経営・管理ビザやスタートアップビザの検討が必要になることがあります。経営・管理ビザでは、会社を作るだけでなく、事業の実体、事務所、資本金または事業規模、事業計画、継続性、安定性などが重要になります。また、外国企業の日本法人や支店を設立する場合、海外本社との関係、日本側の代表者、資金の流れ、事業目的、取引先、従業員計画なども整理する必要があります。
外国企業進出で重要な視点
- 日本でどのような事業を行うのか
- 誰が日本側の代表者・管理者になるのか
- 日本での事務所をどこに置くのか
- 資本金・運転資金をどのように準備するのか
- 外国人役員や従業員の在留資格をどうするのか
- 家族帯同が必要か
- 税務・労務・登記を誰に相談するのか
外国人技術者の家族帯同も重要なテーマ
外国人技術者が日本で長く働く場合、本人の就労ビザだけでなく、家族の在留資格も重要になります。配偶者や子どもを日本へ呼び寄せる場合、一般的には「家族滞在」の在留資格を検討します。家族滞在では、扶養者の在留資格、収入、住居、家族関係の証明などが重要になります。
また、配偶者が日本で働きたい場合、資格外活動許可の範囲や、別の就労資格への変更可能性を検討する必要があります。子どもがいる場合は、学校、保育園、医療、言語サポートなど、生活面の準備も欠かせません。
企業が外国人技術者を採用する場合、本人の採用手続きだけでなく、家族の生活立ち上げをどう支えるかも、人材定着に関わる重要なポイントになります。
北九州市で外国人材を受け入れる企業が準備すべきこと
外国人材を雇用する企業は、採用前の段階から在留資格の確認を行う必要があります。「内定を出した後にビザが取れない」という状況になると、企業にも本人にも大きな負担が生じます。
そのため、採用予定者の学歴、職歴、国籍、現在の在留資格、予定する職務内容、雇用条件を早めに確認することが大切です。特に、半導体関連企業では、技術職、現場管理、品質管理、海外取引、通訳・翻訳など、職務内容が多岐にわたります。どの在留資格に該当する可能性があるのか、職務内容が在留資格に合っているのかを慎重に確認する必要があります。
企業が確認すべき主な項目
- 採用予定者の学歴・専攻
- 過去の職歴・実務経験
- 予定する職務内容
- 雇用契約の内容
- 報酬額
- 勤務場所
- 会社の事業内容・決算状況
- 家族帯同の有無
行政書士トラスト事務所ができること
行政書士トラスト事務所では、北九州市を拠点に、外国人の在留資格申請や外国企業・外国人起業家の日本進出に関するサポートを行っています。
半導体関連分野に限らず、外国人技術者の雇用、家族の呼び寄せ、外国人経営者のビジネスビザ、スタートアップビザなどについて、状況に応じた手続きの整理を行います。たとえば、次のようなサポートが考えられます。
外国人技術者の在留資格申請
技術・人文知識・国際業務、高度専門職、企業内転勤など、職務内容に応じた在留資格の検討をサポートします。
家族の呼び寄せ
外国人技術者の配偶者や子どもの家族滞在ビザ、生活立ち上げに関する手続きの整理をサポートします。
外国人起業家のビザ相談
経営・管理ビザ、スタートアップビザ、会社設立前後の手続きについて、事業計画や在留資格の観点から整理します。
企業向け外国人雇用サポート
外国人採用時の在留資格確認、COE申請、在留資格変更、更新手続きなどをサポートします。
なお、税務、登記、社会保険、労務、契約紛争などについては、それぞれ税理士、司法書士、社会保険労務士、弁護士などの専門家と連携が必要になる場合があります。当事務所では、行政書士として対応できる範囲を明確にしながら、必要に応じて他士業との連携も視野に入れてサポートいたします。
さいごに|期待と現実を分けて、北九州の可能性を見る
ASEジャパンの北九州進出計画は、2024年に大きな期待を集めました。
しかし、2026年5月時点で確認できる情報をもとにすれば、現段階ではまだ本契約や工場建設が明確に確認できる状況ではありません。
そのため、「ASE進出決定」「雇用創出確定」といった表現は慎重に扱う必要があります。一方で、このニュースが今も重要であることは変わりません。2026年1月には、北九州市長が台湾のASE中壢工場を訪問し、仮契約後も定期的な意見交換や関係維持が続いていることが確認されています。
北九州市には、産業都市としての歴史、半導体関連企業の集積、北九州学術研究都市、物流インフラ、理工系人材といった強みがあります。半導体産業の集積が進めば、外国人技術者、外国企業、外国人起業家、そしてその家族にとっても、北九州市で暮らし働く可能性が広がります。
北九州市が本当に国際的な産業都市として発展していくためには、企業誘致だけでなく、外国人材の受入れ、生活支援、在留資格手続き、家族の定着支援も重要になります。
行政書士トラスト事務所は、北九州市を拠点とする行政書士事務所として、外国人の皆さまや外国人材を受け入れる企業の皆さまを、在留資格・ビザ手続きの面から支えていきたいと考えています。
参考情報
- 北九州市「令和6年8月1日 北九州市長定例記者会見」
- 北九州市「令和7年7月24日 北九州市長定例記者会見」
- 北九州市「令和8年1月29日 北九州市長定例記者会見」
- TECH+「ASEが九州に先端後工程工場の建設を計画、北九州市と土地売買の仮契約」
- 日本経済新聞「北九州市長、台湾半導体のASE工場初訪問『パートナーシップ確認』」(2026年1月29日掲載・有料記事)
VISA AND BUSINESS SUPPORT IN KITAKYUSHU
北九州市での外国人雇用・ビザ申請をサポートします
行政書士トラスト事務所では、外国人技術者の在留資格申請、家族の呼び寄せ、
経営・管理ビザ、スタートアップビザなど、北九州市で働く・暮らす・起業する外国人の手続きをサポートしています。
個別の在留資格判断には、本人の経歴、職務内容、会社情報、事業計画などの確認が必要です。
具体的な申請可能性や必要書類については、有料相談にて確認いたします。
行政書士トラスト事務所
北九州市小倉北区を拠点に、外国人の在留資格申請、ビジネスビザ、家族の呼び寄せ、外国人雇用に関する手続きをサポートしています。