認知症の親を不動産詐欺から守るには?高齢者を狙う悪質な契約と家族ができる対策

認知症の親が、知らないうちに不動産を買っていた。

このような話を聞くと、「そんなことが本当にあるのか」と思う方もいるかもしれません。

しかし、判断能力や記憶力が低下した高齢者を狙い、不要な不動産や価値の分かりにくい権利を高額で売りつけるトラブルは、現実に問題となっています。

Netflixのドラマ「地面師たち」でも、不動産をめぐる巧妙な詐欺が描かれ、大きな話題になりました。
もちろん、ドラマの内容と、認知症高齢者を狙う不動産詐欺は同じものではありません。

ただ、不動産取引は金額が大きく、権利関係も複雑です。
そのため、本人が内容を十分に理解できないまま契約してしまうと、家族が気づいたときには大きな被害になっていることがあります。

この記事では、認知症の高齢者を狙う不動産詐欺の手口、家族が気づくためのチェックポイント、被害に気づいたときの相談先、そして認知症になる前にできる対策について、行政書士の視点から解説します。

この記事は、こんな方におすすめです

  • 親が一人暮らしをしていて、詐欺被害が心配な方
  • 親に認知症や物忘れの症状が出てきた方
  • 親の通帳や不動産の管理状況が分からない方
  • 高齢者を狙う不動産詐欺の手口を知りたい方
  • 任意後見、家族信託、成年後見などの認知症対策を検討している方
  • 将来の相続や財産管理について、早めに準備したい方

最初に大切なこと

すでに不動産詐欺の被害にあった可能性がある場合は、早急に消費生活センター、警察、弁護士へ相談してください。

認知症の高齢者を狙う不動産詐欺とは

認知症の高齢者を狙う不動産詐欺とは、判断能力や記憶力が低下した高齢者に対し、不要な不動産、価値の低い不動産、不動産の一部の権利などを、高額で購入させるような悪質な取引をいいます。

たとえば、本人が十分に理解しないまま、アパートの一室を購入したと思っていたら、実際には不動産全体の一部の共有持分だけだった、というようなケースがあります。
また、本人が契約したことを覚えていない、家族が通帳を見て初めて高額な振込みに気づく、というケースもあります。

不動産は、預金と違ってすぐに現金化できるとは限りません。
特に共有持分や価値の低い不動産を高額で購入してしまった場合、後から売却しようとしても買い手が見つからず、被害の回復が難しくなることがあります。

そのため、認知症の高齢者を狙う不動産詐欺は、金銭的な被害だけでなく、その後の相続や家族関係にも大きな影響を与える可能性があります。

「知らないうちに不動産を買っていた」というケース

過去に報道された事例では、一人暮らしをしていた80代の女性が、知らないうちに不動産購入の契約をしていたとされるケースがありました。家族が銀行口座を確認したところ、突然、不動産販売会社に高額な振込みがされていることに気づいたとされています。

本人に確認しても、契約したことや振込みをしたことをはっきり覚えていない。
販売会社に問い合わせると、「本人が納得して契約した」「問題のない取引だ」と説明される。
しかし、実際に調べてみると、購入したのは分かりにくい共有持分であり、周辺相場と比べて著しく高額だった疑いがある。

このようなケースでは、本人がその場で契約内容を十分に理解できていたのか、業者側が本人の判断能力の低下を知りながら契約を進めたのではないか、という点が問題になります。

家族が気づきにくい理由

不動産取引は、家族が日常的に確認していないことが多い分野です。通帳からの高額な出金、不審な書類、知らない業者からの電話や訪問に気づいたときには、すでに契約が進んでいることがあります。

なぜ認知症の高齢者が狙われやすいのか

認知症の症状は、人によって異なります。

外見だけでは、判断能力が低下しているかどうか分からないこともあります。

会話は普通にできる。

身だしなみも整っている。

銀行や役所にも一人で行ける。

そのため、周囲から見ると「まだ大丈夫」に見えることがあります。

しかし、実際には、契約内容を十分に理解することが難しくなっていたり、少し前に説明されたことを忘れてしまったり、相手の言葉をそのまま信じてしまったりすることがあります。
悪質な業者は、このような状態につけ込むことがあります。

また、一人暮らしの高齢者や、家族と離れて暮らしている高齢者は、日常的に相談できる相手が少ないため、狙われやすくなります。さらに、本人が「子どもに迷惑をかけたくない」と思い、家族に相談しないまま契約してしまうこともあります。

高齢者を狙う不動産詐欺の主な手口

高齢者を狙う不動産詐欺には、いくつかの典型的な手口があります。
もちろん、すべての不動産取引が悪質というわけではありません。
しかし、次のような内容がある場合は、慎重に確認する必要があります。

共有持分を高額で売る

不動産全体ではなく、一部の権利だけを高額で売りつける手口です。共有持分は売却や利用が難しい場合があります。

不要な投資用物件を売る

家賃収入が得られる、将来値上がりすると説明し、実際には収益性の低い物件を購入させるケースです。

山林・原野を売りつける

価値の低い山林や原野を、将来開発されるなどと説明して購入させるケースです。二次被害にも注意が必要です。

名簿を使った電話勧誘

高齢者名簿や過去の被害者名簿を使い、電話や訪問で資産状況を聞き出す手口です。

特に注意したいのは、二次被害です。

一度不動産詐欺や悪質商法の被害にあった人は、「この不動産を売却してあげる」「損を取り戻せる」「手数料を払えば処分できる」などと再び狙われることがあります。

本人だけでは判断が難しい場合、必ず家族や専門機関に相談することが重要です。

家族が気づくためのチェックリスト

不動産詐欺を防ぐためには、家族が早めに異変に気づくことが大切です。
次のような変化がある場合は、注意してください。

  • 知らない不動産会社や投資会社から電話が来ている
  • 見慣れない契約書、パンフレット、名刺、封筒がある
  • 通帳から高額な振込みや出金がある
  • 本人が契約内容を説明できない
  • 「大丈夫」「よく分からないけど任せた」と言うことが増えた
  • 知らない人が家に出入りしている
  • 急に不動産投資や節税の話をするようになった
  • 権利証、登記識別情報、実印、印鑑証明書の管理状況が分からない
  • 本人が電話で長時間話している
  • 家族に隠すような様子がある

このようなサインがあるからといって、必ず詐欺とは限りません。
しかし、本人が内容を理解していないまま契約している可能性はあります。
家族が責めるように問い詰めると、本人が不安になったり、かえって話さなくなったりすることがあります。
まずは、落ち着いて書類や通帳の状況を確認し、必要に応じて専門機関へ相談してください。

被害に気づいたら最初にすること

すでに不動産詐欺の被害にあった可能性がある場合、最初にすべきことは、証拠を残し、早急に相談することです。

契約書、重要事項説明書、領収書、振込明細、通帳、業者の名刺、パンフレット、電話番号、メール、LINEのやり取りなどは、捨てずに保管してください。
また、相手業者に一人で連絡し、感情的に交渉することは避けた方が安全です。

状況によっては、相手に証拠を消されたり、さらに言いくるめられたりする可能性もあります。

相談先の目安

  • 消費者トラブルとして相談したい場合:消費生活センター、消費者ホットライン188
  • 詐欺や犯罪の可能性がある場合:警察
  • 契約取消し、返金交渉、損害賠償、訴訟を検討する場合:弁護士
  • 本人の判断能力が低下しており、今後の財産管理が必要な場合:家庭裁判所、成年後見制度の相談窓口、専門家

認知症高齢者の資産管理は大きな社会課題

認知症は、誰にとっても無関係ではありません。

厚生労働省の研究班による将来推計では、2040年の認知症高齢者数は584.2万人、MCI高齢者数は612.8万人とされています。MCIとは、もの忘れなどの軽度認知機能障害があるものの、日常生活は自立しており、認知症とは診断されない状態をいいます。
つまり、認知症やその前段階の状態は、今後ますます身近な問題になります。

高齢者本人の財産をどう守るか。

詐欺や悪質商法からどう守るか。

本人の生活費、医療費、介護費をどう管理するか。

不動産や預貯金を、本人のためにどのように使うか。

これは、家族だけでなく、社会全体で考えるべき課題です。

認知症になる前にできる対策

認知症対策で最も大切なのは、本人がまだ判断能力を持っているうちに準備することです。

判断能力が低下した後では、契約できる内容が限られたり、本人の意思確認が難しくなったりします。

元気なうちに話し合うことは、少し気が重いかもしれません。
しかし、何も準備しないまま認知症が進むと、家族が本人の意思を確認できず、財産管理や相続手続きで困ることがあります。

1. 家族で話し合う

まずは、財産や生活について家族で話し合うことが大切です。

どこで暮らしたいのか。

介護が必要になったら、誰に相談してほしいのか。

通帳、印鑑、権利証、登記識別情報、保険証券などはどこにあるのか。

不動産を売る予定があるのか、残したいのか。

こうしたことを、本人が元気なうちに確認しておく必要があります。

2. 任意後見契約

任意後見契約は、本人が十分な判断能力を持っているうちに、将来判断能力が低下した場合に備えて、信頼できる人に支援を依頼しておく制度です。

任意後見契約は、公正証書で作成します。

将来、本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで、任意後見人による支援が始まります。

本人が自分で支援者を選び、どのような事務を依頼するかをあらかじめ決められる点が特徴です。

不動産、預貯金、介護契約、施設入所など、将来の生活に関わることを整理しておきたい方にとって、重要な選択肢になります。

3. 財産管理契約・見守り契約

任意後見契約は、本人の判断能力が低下した後に本格的に機能する制度です。

一方で、判断能力はあるものの、高齢や体調不良により、日常的な手続きや財産管理が不安になることもあります。

そのような場合には、財産管理契約や見守り契約を検討することがあります。

定期的に連絡を取り、生活状況を確認したり、本人の依頼に基づいて一定の財産管理をサポートしたりする契約です。

一人暮らしの高齢者や、子どもが遠方に住んでいる場合には、こうした仕組みが安心材料になることがあります。

4. 家族信託

家族信託は、本人の財産を信頼できる家族に託し、本人のために管理・活用してもらう仕組みです。

たとえば、不動産を持っている親が、将来認知症になった場合に備え、子どもに不動産管理を託すようなケースがあります。

家族信託を利用すると、本人の判断能力が低下した後でも、信託契約で定めた範囲内で、受託者が財産管理を行える場合があります。

ただし、家族信託は設計が複雑です。

不動産登記、税務、相続、家族関係なども関係するため、司法書士、税理士、弁護士などとの連携が必要になることがあります。

5. 遺言書の作成

認知症対策とあわせて、遺言書の作成も重要です。

認知症が進み、遺言能力がないと判断される状態になると、有効な遺言書を作成することが難しくなります。

本人の意思を明確に残すためには、元気なうちに遺言書を作成しておくことが大切です。

特に、不動産を持っている場合、相続人が複数いる場合、前婚の子がいる場合、子どもがいない場合、おひとりさま・おふたりさまの場合は、早めの準備が必要です。

認知症が進んだ後の対策|成年後見制度

すでに認知症が進み、本人が契約内容や財産管理について十分に判断できない場合には、成年後見制度の利用を検討することがあります。

成年後見制度は、判断能力が不十分な方を法律的に保護し、支援する制度です。

家庭裁判所に申立てを行い、本人の状況に応じて、成年後見人、保佐人、補助人などが選任されます。

成年後見人等は、本人の財産管理や契約手続きについて、法律上の権限に基づいて支援します。

ただし、成年後見制度は、家族が自由に財産を使える制度ではありません。

本人の財産は、本人のために使うことが原則です。

また、一度制度が始まると、原則として本人の判断能力が回復するなどの事情がない限り、簡単に終了するものではありません。

そのため、制度のメリットと注意点を理解したうえで検討する必要があります。

行政書士ができること・できないこと

認知症高齢者を狙う不動産詐欺については、行政書士ができることとできないことを明確に分ける必要があります。

区分 内容
行政書士がサポートできること 任意後見契約、財産管理契約、見守り契約、遺言書作成、相続関係説明図、遺産分割協議書など、将来に備える書類作成や手続きの整理。
行政書士ができないこと 相手業者との返金交渉、契約取消しの交渉、損害賠償請求、訴訟代理、紛争性のある法律相談。
弁護士に相談すべきこと すでに被害が発生している場合、契約を取り消したい場合、返金を求めたい場合、業者と争いになっている場合。

すでに被害が発生している場合は、弁護士や消費生活センター、警察への相談が優先です。

一方で、まだ被害が起きていない段階で、将来に備えたい場合は、行政書士が任意後見契約や遺言書作成などの面からサポートできる場合があります。

行政書士トラスト事務所でサポートできること

行政書士トラスト事務所では、認知症になる前の備えとして、将来の財産管理や相続に関するご相談をお受けしています。

特に、おひとりさま・おふたりさま、子どもが遠方にいる方、不動産を持っている方、相続人が複数いる方は、早めの準備が重要です。

当事務所では、状況に応じて次のようなサポートを行っています。

任意後見契約の準備

将来、判断能力が低下した場合に備えて、信頼できる人へ依頼する内容を整理します。

財産管理・見守り契約

一人暮らしや遠方の家族がいる場合に、生活状況や財産管理の仕組みを整理します。

遺言書作成サポート

本人の意思を明確に残し、相続トラブルを防ぐための遺言書作成をサポートします。

相続手続きの整理

戸籍収集、相続人調査、遺産分割協議書作成など、相続手続きの一部をサポートします。

なお、家族信託、不動産登記、税務、すでに発生している紛争については、司法書士、税理士、弁護士などとの連携が必要になる場合があります。当事務所では、行政書士として対応できる範囲を明確にしたうえで、必要に応じて適切な専門家への相談もご案内します。

さいごに|「まだ早い」と思う時期が、準備できる時期です

認知症の親や家族を不動産詐欺から守るためには、早めの準備が必要です。

詐欺被害にあってから動くことも大切ですが、被害が発生した後は、契約取消し、返金、証拠集め、弁護士相談など、非常に大きな負担がかかります。

だからこそ、本人が元気なうちに、家族で話し合い、財産の状況を整理し、必要に応じて任意後見契約や財産管理契約、遺言書作成などを検討することが重要です。

認知症になってからでは、できる対策が限られることがあります。

「まだ大丈夫」

「まだ早い」

そう思う時期こそ、本人の意思を確認し、将来に備えることができる大切な時期です。

家族を責めるのではなく、本人を守るために、今できる準備を少しずつ始めていきましょう。

FAMILY AND FUTURE PLANNING

認知症対策・相続対策は、早めの準備が大切です

行政書士トラスト事務所では、任意後見契約、財産管理契約、遺言書作成、相続手続きなど、
将来に備えるためのご相談をお受けしています。

すでに詐欺被害にあっている場合は、消費生活センター、警察、弁護士への相談が必要です。

当事務所では、被害を防ぐための事前対策や、将来の財産管理・相続準備をサポートします。

行政書士トラスト事務所

北九州市を拠点に、任意後見契約、財産管理契約、遺言書作成、相続手続きなどをサポートしています。

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